「こうやって俺が折れるのを待っるん?ごねて俺が折れるんを待ってるん?」
彼の言うこと、一言ひとことがぐさりと心に刺さった。
だけど、実際彼の言う通りなのだ。
「こういうやり方はずるいんちゃいますか。」
「そんなん言うたら、そっちもずるいやん。」
「…まぁ、否めませんけど。」
彼の部屋は縦に長くて、照明が隅っこの方にあって
【こんなんおしゃれやろ?】
なんていつも言う。
左に目をやると、アロマポットから白い煙が出ていた。
こいつのどこがいいのでしょうか。
全くわからないのだけども。
若い男女がベッドの上に。
後々起こることはだいたい想像がつく。
だけども
「付き合ってください。」
「嫌です。」
「付き合ってください。」
「付き合いません。」
「じゃあ、嫌です。」
「でも、ここまで来たら覚悟はできてるでしょ?」
「嫌です。付き合ってからじゃないと嫌です。」
「だから、付き合いません。」
好きだから家に行くんだよ。
好きだからベッドに上がってしまう。
たとえそれがいけないことだって
きちんと頭の中でわかっていても。
そう思ってしまったらもう止まらない。
こいつがどんなに嫌なやつか
こいつがどんなに器の小さいやつか
知っていても、もうどうしようもない。
「付き合ってください。」
「付き合いません。」
そのうち抵抗するのも面倒になってくる。
私は腐った人間です。
「ずるいよ…。」
「なにが?」
「私はただ好きなだけなのに…。」
「ずるいのはどっちやねん。」
「…え?」
「こうやって俺が折れるのを待っるん?ごねて俺が折れるんを待ってるん?」
「俺が付き合うっていうまで、そうやって待ってるん?」
「…。」
彼の言うことがぐさりと心に刺さった。
だけど、実際彼の言う通りなのだ。
「何度も言うわ。付き合いません。」
視界がぼやけた。
わかってる。わかってる。
これでいいんだよ。
こんなやつとは付き合わなくて正解なんだよ。
だけども、心がひりひりと痛む。
「付き合わへんけど、やろうとは思う。」
「最低や。」
「最低やで、俺は。」
けろっとした顔で言った。
結局こんなもんなのか、私の人生。
まるでからっぽ。
これから職場で会っても、何事もなかったかのように笑うんだよ。
お互い、「お疲れ様でした。」なんて言いながら。
すれ違うたびに苦しくなったり
通り過ぎた後後ろを向く私の気持ちなんか
こいつは一生わからないんだ。
だとしたら、大人っていやだ。
腐ってるよ。汚いよ。
私が知ってる恋愛は
ショーケースに並べられてきれいな色してて
みんな幸せでハッピーエンド。
だけど実際は鉛色。
汚くて、幸せではない。
こんなもんか人生は。
ふと彼を見たら、ぼーっとアロマポットの煙を見ていた。
きっとこいつはなにも考えてないんだろうな。
そう思ったら、本気で殺してやろうかと思った。
fin.
お前なんか、消えてなくなってしまえ。