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「彼女出来てんやんか。」
「そう。」

彼のその言葉に
あたしはめまいがした。
冷静を装っていたが、あたしの持つティーカップは小刻みに震えていた。

「ほんま、久しぶりやねんか。彼女出来るん。」
「そうなんや。」
知ってる。知ってるよ。
「もう毎日楽しくて楽しくて…。」
楽しそうに話す彼。
精一杯の笑顔で答えるあたし。

いつからだろうか。
彼に恋愛感情を抱いていたのは。
ずっとずっと昔から彼のことを知っていて
近すぎて見えなかったんだな。
あたしのことなんて。
灯台下暗しなんて言葉
久々に頭の中に出てきたよ。

「高校生ん時とか、よくお前に相談に乗ってもらってたよな。ありがとうな。」
「なんやねん。急に。」
今さらそんなこと言われたって
ただ、虚しいだけだ。
彼の顔は綻んでいる。
あたしの顔は歪んでいる。

「こんなとこで油売ってんと、彼女さんに会いに行かへんの?」
「ん?まだ待ち合わせに時間あるから。」
「…そう。」
そうなんだ。
結局あたしは時間つぶしでしかなくて
彼の目にはあたしの姿なんて一個も映ってないんだろうなって考えたら
情けなくて、泣きそうになった。

「あたし、バイトやねんか。」
「そうなん?今日なんもないって言うてたやんか。」
「急に入らなあかんことになってん。」
「わかった。またな。」
「じゃあね。」
テーブルにひじをついて、彼は手を振った。

想い続ければ実るとか
そんなの漫画の世界の綺麗事じゃないのか。
あたしは想ってたよ。
誰にも負けないくらい。
だけど、駄目だった。
馬鹿みたい。
本当に馬鹿みたい。

目頭が熱くなって
呼吸が苦しくなった。
彼に対する想いが病気だったとしたら
あたしは末期患者だろう。
消せない。
治らない。
どうしようもない。
遠くからの一筋の光すら見えないのだ。

ここはホスピス。