「なぁなぁ。」
「ん?」
「呼吸の仕方って、忘れたらどうなんねやろ。」
「…はあ?」
隆くんは真剣に言っている。
ただ、どうしてもあたしは真剣になれない。
彼が何を言っているのかよくわからない。
「もしも、やで?もしも呼吸の仕方忘れたら…。ぞっとするわ、俺。」
「あたしはそんなこと言うあんたにぞっとしてんで。」
「ほんまに?」
「ほんまに。」
「でもさ、でもさ。思わへん?忘れたらって。」
「あたしは思わへんけど。」
「いや、俺は思うなぁ。」
なんやねん。と心の中でつっこんでしまった。
「息吸うことくらい大事なこと忘れてしまったら、って思うと怖くなる。」
「あぁ…。」
それはそうか。
それはそれで少し納得出来てしまった自分がいる。
「もしもお前のこと忘れたら、って思うとすごく怖いよ。」
「うん…。」
もしもあたしが隆くんのこと忘れるとしたら。
それはきっと洗脳されたか死んだ時くらいだろう。
いや、死んだって忘れない。
そう思ってる人のことをもしも忘れてしまったら…。
「すんごい怖い。」
「やろー?」
すごく真剣に答えたあたしとは裏腹に
のん気にジュース飲んでる彼。
もしもあなたを忘れることがあるのならば
それはあたしにとって呼吸を忘れるということなのだ。
当たり前だけど、かけがえのないもの。
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