「そんなに自転車が欲しかったん?」
「うん。」

彼は呆気らかんとした表情でいいました。


「そんなに、駅から学校まで自転車で行きたかったん?」
「うん。」


「だってさ、」
「うん。」
「15分も歩くん面倒やろ?」


彼がこれを正気で言っているのなら
なんて狂った男なんだろう。
弱冠高校生にして見事なアシ。



「私がたまたま駅の近くに住んでたから、たまたま朝駅通るから?」
「だからそうやって。」



高校に入学してから約三か月。
クラスの男の子と自転車の二人乗りをし、駅から歩く同級生を尻目に登校してた私。

高校生っぽいな、なんて思っていたけど
今じゃ見事な昼ドラだ。


「じゃあ私は便利なアシやったわけだ。」
「ま、そうやねんけど。」


「なんも思わへんの?」
「は?なにが?」
面倒くさそうに言う彼。


「自分のこと好きになった女に、アシとか言うて。」
「あぁ…。勘違いさせたならそれはごめん。」
「…。」

もう虚しすぎて言葉も出なかった。


私は入学してから自転車を奪ってくる将のことが好きで
自転車の荷台に乗りながら
いつもうれしいって感じてた。
だけど将にとっては私はいらなくて
自転車が欲しくて
ただ学校に行くための自転車が欲しくて…



「じゃあもう駅には寄らへんわ。」
「なんでなん?」
彼が真顔で聞いてきた。


こいつには何を言っても駄目なんだとわかった時
なんだかもう笑うしかなかった。


そして言ってやった。




「死んでしまえ。」




浮かれてた私が馬鹿だった。