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だってほら私頭が悪いし
思ったことはすぐ口に出したくなるし

だけど、これだけは唯一言えなくて
馬鹿な頭でもたったひとつだけわかること。






ほとんど電気が消えてしまった商店街。
とぼとぼ歩く二人。
一人は背高のっぽで
もう一人はチビのどうしようもないやつで。

どうしようもないやつは背高のっぽにこう言った。
「暗いね。」

そうしたらのっぽが答えた。
「夜だもん。」


当たり前のことを当たり前の顔して話す。
それが当たり前のことなんだけども。

当り前のように思っている、のっぽに対する気持ちは
これだけは本当に言えなくて
その他のどうでもいいようなことはすらすら言えるのに
たったひとつ
たったひとつだけどうしても…


「大川くん。」
「なんですか。」


のっぽは私の顔を見ずにすたすた歩いて行く。
もう本当にどうしようもなくて
気持ちだけあふれて
でも伝えれなくて

のっぽはきっと私のことなんてなんとも思っていないのだろう。
そんなこと
馬鹿な私にだってわかる。
だから余計に
だから余計にどうしようもない。

自分から砕けにいく必要なんてあるのか。
そんな必要どこにもないだろ。

だけども
砕けたい。
砕けるのなら思いっきり砕けて
塵になって舞いたい。
もうそんなのでいい。
だから
だから…
私に勇気をください。
こんなちびでどうしようもないやつに
ほんの少しでいいんで勇気をください。


「大川くん。」
「どうした?」

ちょっとだけ私の顔を見た。
もうね、覚悟を決めようか。

「大川くん、好きです。」

大川くんは少しだけ困った顔をして
「ありがとう。」
そう言った。

それ以上なにも言わなかった。
私も大川くんも。


だってもうこれ以上どうにもならないから。
これ以上素因数は分解できないよ。
これ以上微分はできません。
ルートも外せない。
面積も求められない。


大川くんに愛する人がいるとか。
大川くんの帰りを待っている人がいるとか。
そんなこと知ってるから。
馬鹿でも知ってるから。

ただ言いたかったこと。
当たり前だけど、非日常的なこと。

あぁ、背高のっぽくん。
私はあなたのことが大好きですよ。

背伸びして伝えたい言葉がある。